どうも今日は、もしくは今晩は。の・・・さまの執事をしています、六道骸です。 僕が何故、彼女の執事になったのかは色々事情の上にある事なので気にしないで下さい。 絶対的に言えることは、僕は彼女のことを敬い、恋慕っているということです。 ここまで素直に言うのはなかなか恥ずかしい気もしますが、まぁ、良いでしょう。 執事をやって幾年、僕の気持ちは何ら変わりません。 と、言いたいところなのですが、彼女の性格が素晴らしく逞しくなっています、どうしましょうか。 別にのこと・・・、さまの事は嫌いじゃないですけども、嫌いじゃないですけど、・・・ねえ。 「骸、ひま」 久しぶりに口を開いたかと思えば、その言葉どうなんでしょうか。 綺麗に艶のあるテーブルの上に資料やら手紙やらを目で流す彼女は頬杖を付いている。 「心配いりません。10分後には家庭教師が来ますよ」 「うわっ」 さまは女らしかぬ声を出して眉間に皺を寄せ、手紙を机にパチン、と置いて席を立つ。 僕が逃げは許しませんよ、とだけ言うと、彼女はトイレだと言い張って部屋を出て行った。 逃げる気満々じゃないですか、全く困ったお嬢様です。 結局、家庭教師の方には仮病を使うはめとなって、さまを自室に監禁・・・、待機させました。 「大体、休日まで勉強勉強って、やってられないわよ。飛び級してるから別に良いじゃない」 「日々何事にも頭を使うことが大切なんです。それに学というものに限界はありませんから」 ベッドに横になって分厚い本を読んでいる彼女が愚痴を漏らす。 こんな性格をしていますが、実力は確かです、彼女。それにとても計算高い。 今でも勉強は嫌と言いつつ、気難しそうな本に囲まれてのんびりしているさまは凄いと思います。 彼女はそれが自然だと言うから尚の事です。 「骸、喉が渇いた。何か食べたい。あ、頼んでた本届いた?やっぱりお寿司食べたい」 ほんとに最近のさまの言動には困ります。僕は既に用意していたお茶を淹れ、何種類かのクッキー(スフォリアティーネ、エスプレッソメレンゲ、オービスモーリスなど)を用意していたのですが、どうやら的が外れた様です。取り敢えず、彼女の喉は潤せます。 「例の本は今日の夕方には届くでしょう。クッキーをご用意していましたが、お寿司ですか・・・。 残念ながら材料から取り寄せる形になるので今すぐには無理です」 「そう。じゃあ努力して」 うつ伏せになって本を読む彼女の手の届く場所にお茶やクッキーを運ぶ。 早速、綺麗な白い手がクッキーへ伸び、それが口の中でサクサクと食されている。 素っ気ない返事に内心イラッとしますが、美味しいね、このクッキー。と純粋に微笑まれたら何も言えません。 寧ろ、満足してしまう自分が居ます、仕方ないです。 時折見せる彼女のこういった素の仕草などに胸がきゅん、てきます、本当はとても可愛らしい御方です、はい。 「ねえ骸、つっくんに会いたい」 「綱吉くんの事ですか?彼は今、日本でしょう。それにちゃんとした学生ですから」 「それなら私から行く。お父様に連絡よろしく」 「それはいけません。後ほどこちらから招待状なり送りますので、皆さんと一緒にパーティーを催されては?」 「さすが骸!それで決まりね。・・・そうだ、その時に武にお寿司作ってもーらおっ」 さまは突発的にものを発するので大変です。有言実行な方なので、本当に大変です。 あ、言い忘れていましたが、ここのお屋敷はイタリアにあります。 マフィアと関係が無いと言えば、そうではない階級です。 綱吉くんは、ある事情で日本へ行った時にさまと仲良くなった彼女お気に入りのお友達です。 勿論、綱吉くんの周りにいる友達も然り。隼人くんとは仲が良いのか悪いのか分かりません。 一応、幼少期からの付き合いはあります。 「さま、数日後に舞踏会がありますが、ドレスは新調しますか?」 「舞踏会なんて面倒。出たくない」 「おや、舞踏会がお嫌いとは初耳ですよ?」 その話しを切り出した途端に、さまの表情が曇った。本当に嫌な顔だ。 以前は舞踏会と聞いただけで喜んでいたのに。もしかして、反抗期ですか。そうなんですか。 もしそうなら、例え駄々を捏ねても許しません。断じて許しませんよ。 「とにかく、出たくない。寝てるから」 「いいえ、出てもらいます」 「嫌なものは嫌なの」 完全に不貞腐れてしまった彼女の声は悲痛だった。何かあったのだろうか、と不安になり、傍まで寄る。 きらきらと輝くブラウンの髪がふわふわとしたベッドに淫らに広がっている。 「どうしたんです?理由があるのでしょう」 「・・・・・・・・」 「ほら、言わないと分かりませんよ」 「骸が傍にいないから、やだ」 「・・・・・・・・」 済みません。今のは幻聴でしょうか、それとも聞き間違えでしょうか、何なんでしょうか。 もし、もし幻聴でも聞き間違えでもなければ、これは世間一般的に云う、殺し文句になるんじゃ・・・。 ちょっと待って下さい、僕いま少なからずドキッてなりましたよ、主相手にドキッてなっちゃったじゃないですか。 ベッドに寝ている状態で上目遣いして、可愛くか細い声でそんな事言うなんて、 けしからん気持ちになるじゃないですか、それって執事として如何なんですか僕。そうだ、落ち着きましょう。 「さま、それはどうゆう意味です?」 「舞踏会の時、骸何処か行っちゃうじゃない」 「ええ、まぁ。会場の手伝いをしなければいけないので・・・」 「骸が私から離れた途端、貴族風情が寄り付いてくるの。それが嫌なの、気持ち悪いの」 成程。そう言われれば、心当たりがあります。その方々には後ほど、ささやかな贈り物でも献上しましょうか。 例えば、純銀のナイフとか。 「だから舞踏会はいや」 「そうゆう事なら、さまのお傍に始終付きますよ」 「ほんと?」 「ええ、勿論。大好きな舞踏会には出てほしいものです」 「うん、大好き!・・・じゃあついでに、骸がこれからも私の傍を離れないって誓って?」 そんなの御安いご用ですよ。 僕はベッドに座っている彼女の白い手をとり、その甲へとキスを落とす。 今この瞬間に酔いしれる僕は、既に貴方だけのもの。 あの出会いからずっと、これからもずっと、僕はを慕い、のために生きていく。 そう・・・ |