「お嬢様、足元に気を付けるさ」
「どうして?」


「そこから3歩先に段差があるさ」
「そう・・・ ありがとう、ラビ」




俺の手はを導くためにある。
生まれてからずっと目の見えないを導くため。




が怪我をしないように。
が迷ってしまわないように。




そのために俺の手が存在する。
俺の手を頼りにするのために。




「ラビ・・・」
「ん?」


「ラビの手は・・・」
「俺の・・・ 手・・・?」


「優しいのね」
「そ・・・ そんな事ないさ・・・っ」




俺の手は・・・ を守るためにある。
それだけの事。それ以外の必要性は何も無いさ。




「でも、ちょっとだけ・・・ 手を放してくれる?」
「え・・・?」


「一人で・・・ 歩いてみたいの」
「でも・・・」


「過保護ね、ラビは」
「だって危ないさ?」


「ここは私の庭よ? もう覚えてるわ」
「・・・・・」




手探りで庭の中を一人で歩くの姿。
足元は確かじゃないし手は何かを探るように歩いてる。
何もかもが危なっかしいから・・・




思わず自分の手をに差し出したくなる。
でもそれを我慢してただ、を見守るさ。
一人で歩く事がの望みなら・・・ 俺はそれを見守るさ。




の手を導く事に慣れた俺の手はうずいてるけど。
守りたいモノをなくして冷たくも感じるけど。




だからこそ気が付いた。




「ラビ?」
「やっぱ・・・ 無理さ・・・」




俺は我慢できなくての手をこの手に握った。




「俺は・・・ お嬢様のこの手を握っていたいさ・・・」
「ラビ、どうしたの?」


「お嬢様の手を握ってない俺の手は・・・ 冷たくてしょうがないから」
「寒いの?」




「あぁ、寒い」そう言って思わずをこの腕の中に抱き締めた。
「え・・・?」って戸惑うだけど・・・ 分かって欲しいさ。




の手は俺を導くって・・・




「お嬢様・・・」


「お嬢様に・・・ 俺の手を放して欲しくないさ、これからもずっと」


「これからもずっと手を握れる距離にいて欲しいさ・・・」




そして、2人でこうして歩いていきたい。
ずっと、ずっと、こうして。










手を繋いで歩きませんか?

(君が僕のこの手を握ってくれるなら僕はどこまでも君と一緒に)











written by 心