「あの・・・っ シャルロッテさん・・・っ」
「なぁんて健気なの、貴方って人は、ステラっ!」


「テスラですっ それより私から離れてくれませんかっ?!」
「だめなのぉ、私って健気な殿方に弱いのよぉん」




必死にお嬢様のベッドの上で抱きつかれたまま
シャルロッテ様から逃れようとしていると
突然、悲鳴のようなものがお嬢様の部屋のドアのすぐ外で・・・
何事かとそちらに目をやるとそこには抱えていたであろう荷物を
そのまま床に落とし、目を大きく見開き口を開けたままのお嬢様の姿。




そしてその次に起こった事は・・・




「私のステラぁ・・・っ!!!」




と、お嬢様が大きな声で叫んだかと思うと
シャルロッテ様に・・・ 飛び掛っていた・・・




その衝撃でシャルロッテ様は私の身を自由にしたため
私はその勢いでベッドの下の床へとまっしぐら。
見上げた景色は想像にも及ばないほど凄まじく・・・
お嬢様がシャルロッテ様におんぶをされた形でしがみ付き
シャルロッテ様は化け物を落とすかのように体を揺すぶっている。




「な・・・っ 何事やねんっ?!」
「騒がしい・・・」




騒音を聞きつけた市丸ギンとウルキオラがドアから部屋を見ているが
その凄まじさに二人ともが言葉を失ったようだ。




「私のステラに何すんのよっ!!!」
「あんた一体なんなのよっ!!!」




お嬢様とシャルロッテ様の間に飛び交うこの会話。
私は相変わらず呆気に取られてベッドの上で
これでもかと暴れるこの二人を見ているだけ。
それでもやっと立ち上がって「お嬢様っ!」と声を大にする私。




「お嬢様ぁっ?!」疑いの声がシャルロッテ様から漏れると
「そうよ、私がよ」と、いつの間にか下敷きにした
シャルロッテ様を見下ろして不気味に笑うお嬢様・・・




「ちょ、ちょ、ちょ・・・ あんたそれ何っ 何か垂れてきてるわよっ」
「風邪引いたのよ」




必死にお嬢様の腕を引っ張りシャルロッテ様から
引き下ろそうとする私を無視してお嬢様の不気味な笑いが響いた。




「ぎゃあああっ 何この子っ! 信じられないっ!!!」
と、シャルロッテ様の悲鳴が聞こえたかと思うとお嬢様が・・・
ずるずると鼻水を・・・ 焦って部屋のティシューを掴む私。
それを受け取って「風邪引いちゃった」と微笑むお嬢様。




ベッドの上ではシャルロッテ様があまりのショックに気絶しておられ
鼻をかんだお嬢様はにっこりと「ステラ、大丈夫?」と・・・
「はい、おかげさまで・・・」としか答えようのない私を見て
お嬢様は安心したように微笑むと私の腕の中に倒れられた。





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「そうか、は風邪を引いているのか・・・」
「見たいです」


「で、要先生はなんと?」
「数日の安静をと。それから薬を残して行かれました」


「で、シャルロッテちゃんは?」
「お嬢様のベッドの上で気絶されたままです」




シャルロッテちゃんって・・・ ちゃんって呼ばれる存在か、あいつは?
事件の報告を帰宅されたご主人様に報告する市丸ギン。
それも気になるがもっと気になる事が彼にはあった。




「じゃぁ、僕の愛する娘は今何処に?」
「テスラの部屋で休養されてます」


「そうかい、でもなぜテスラの部屋に?」
「いや・・・ それは・・・ 緊急だったもので・・・」




と、言訳をしてみるが正直に言えば
お嬢様をテスラの部屋運ぶ方がずっとラクだった、それだけの事。




「あの・・・ 質問があるんですけど?」
「なんだい?」




紅茶を差し出しながらご主人様に聞く市丸ギン。




「要先生って、盲目ですよね?」
「あぁ、そうだよ」


「それで、この家のお医者さんですか?」
「頭がいいからねぇ、彼は」


「いや、でも手術とかになったらどうしますの?」
「もちろん彼がするよ、誰かが彼の目になるんじゃないかい?」




誰かが彼の目になる・・・?




「どうした、ギン、何処か体の調子でも悪いのかい?」
「いえいえ、ぴんぴんですわ」




やっぱり自分のご主人様は只者ではないと思ってしまった市丸ギン。
それと同時に絶対に健康でいようと自分にも誓った。






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